遺言と比べた信託のメリット
遺言は、「誰に、どの財産をあげる」ことを決めるだけですが、信託では、「誰に、いつ、何を目的として、どのような形で財産をあげるのか」をきめ細かく指定することができ、遺言と比べて信託には次のようなメリットがあります。
① 相続発生時の資産凍結を防げる
委託者(受益者)の死亡により信託が終了しない設定にしておけば、相続発生後も受託者が従前どおりの財産管理を継続でき、受益者は切れ目なく財産給付を受けることができます。つまり、相続発生後の資産凍結(預金口座の凍結等)を回避できます。
② 遺産受取方法の多様化
遺言の場合、原則として一括で遺産を渡すことになりますが、子供が浪費家であったり、未成年である場合には、一度に高額な遺産を渡すことは必ずしも適切ではありません。
このような場合、信託を利用することで、遺産の中から生活費として毎月定額を給付することや、子が成人した時にまとまった給付をするなど、柔軟かつ多様な受渡し方法の指定が可能となります。
③ 資産承継・事業承継問題への対応
通常の遺言であれば、自己の資産を誰に相続させるかという一世代(1回限りの財産の移転)までしか資産の承継先を指定できません。したがって、それを引き継いだ者が更にその先どのように資産を承継させるか(どのような遺言を書くか)を拘束することができないことになります。
しかし、信託を利用することで、民法の法定相続の概念にとらわれない柔軟な承継先の指定が何段階(何世代)にもわたって可能となります。つまり、2次相続発生以降の代々にわたる承継の順序を指定して、資産承継(経営権承継)の道筋を自分の意思で作り上げることができるのです。例えば、自分の死後は事業を引き継ぐ弟に、弟の死後は自分の長男にという指定が可能となります。
今後は具体的な信託の活用例をご紹介したいと思います。
古川