登記と実体がずれる場合
ある不動産が、諸々の事情で相続を原因として所有権移転したのに贈与を原因として所有権移転したかのような登記が介在したり、Aが所有しているかのような登記があるのに、本当の所有者はBだったりすることがあります。
中にはもうとうに亡くなったおじいちゃんのそのまたおじいちゃん、みたいな昔の人の所有権のまま放置されていわゆる「本家」の人がそこに居住している場合。
この場合、本来なら登記簿上所有者として表示されている人の相続人の戸籍を全て取り寄せた上で、その相続人を集めて、遺産分割協議書を作成し、(協議でダメなら遺産分割調停を申し立てする必要があります)実際に居住している人の誰かの所有にするという方法をとるべきではあるのですが、中にはいますよね、多額かつ法外の「ハンコ代」をよこせという人。それから、あまりにも相続人の数が多すぎてお話合いが不可能である場合。または行方をくらませてどこにいるのか、生きているのかすら分からない相続人がいるという場合。
こういう時、弁護士が時々とる「荒療治」があります。
それは、長期間居住している人が原告となって、この住んでいる不動産を「時効取得した」ということを原因に訴訟を提起してしまう方法です。
被告となるべき他の相続人には、事前にお話しておくか、お手紙などをお送りするなどし、いきなり訴状が送付されたときにビックリしてしまわないよう手立ては講じるのですが、この方法なら、不動産に興味があり訴訟に答弁してきた人にだけ、当該不動産の評価額のうちその方の相続分の額に相当するお金を支払うことで解決し、登記移転のための判決をもらうという方法です。判決がとれれば、そして、これが確定すれば、これで不動産の所有権移転登記ができることになります。ただし、相続人間において時効取得が認められるかという論点があるので、真の意図はともかく、万が一、徹底的に争う相続人がいた場合には、リスクがないわけではありませんが。
また、時効取得の方法だと場合によっては一時所得としての税金を納めなくてはならない場合もあるようなので、とにかく不動産の登記の放置は後でかなり厄介になるので気をつける必要があります。
このように相続と登記、相続と税金という問題は、切っても切り離せない問題が多く、士業が互いに連携し合い解決に導くことが必要不可欠です。
私たち相続サポーターは、士業間で連携しあい、ご依頼者の利益のために最も適切な法的な手続きを模索しますので、お気軽にご相談ください。
鈴木芳乃